太宰治の未完の絶筆作品に『グッド・バイ』というものがあります。この作品の映画が今月公開されることを知ったので、原作との違いの予想などを記します。(この記事は、移行前のブログに2020/2/5に掲載されたものです)
※ 実際に観てきた時の記事はこちら。
目次
原作の『グッドバイ』のストーリー
原作は青空文庫でも読めますし、文庫本だと35ページですぐ読めるのですが、あらすじを書いておきます。
戦後、主人公の田島(34歳・男)は、表向きは雑誌の編集長をしているものの、裏では闇商売に手を出しており懐は暖かである。しかし、疲れか歳のせいか、田舎から家族を呼び寄せて小さな家で静かに暮らしたいと考えるようになった。
ここで大きな問題が…10人近くいる愛人とどう別れるか?
単に別れればいいだけ(後述のキヌ子にも同じようなことを言われる)なのだが、辺に律儀な田島はきちんと別れるためにもっともらしい理由付けをしたいと考えている。悩む田島に、たまたま外出先で出会った文士に妙な秘訣を授けられる。「どこかですごい美人を見つけて事情を話し、田舎から呼び寄せた女房のふりをしてもらう」
しかし、すごい美人はなかなか見つからない。そんな中で偶然声をかけられた、闇商売での知り合い(キヌ子)が、おしゃれをすれば実はものすごい美人であることを知る。そこで、キヌ子に協力を仰ぎ、愛人を歴訪していく。
グッドバイ のあらすじ(当サイト管理者によるもの)
今の時代に客観的に見ると、なかなかのクズ男ですね(笑)。それでもモテるのは羨ましい。
原作では、(キヌ子への謝礼が予算オーバーしたこと以外は)美容師の青木さんと首尾よく別れ、洋画家のケイ子さんの家を訪れようとしているところで、太宰治の自殺による絶筆となっています。
原作と映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』(2020年)との違い(予想)
往々にして、文学作品を映像化するとストーリーとの差異が出るものです。特にこの作品は原作が短いので、差異が出てくることが予想されます。
この映画はまだ公開されていないので、公式サイトの情報をもとに原作との差異を予想してみます。この記事の執筆時点では未公開であり、差異はあくまでも私の個人的な予想なのであしからず!
登場人物の違い
映画の公式サイトの登場人物リストには、原作には出てきていない人が何人かいます。
- 田島周二
- 永井キヌ子
- 大櫛加代 *
- 水原ケイ子
- 青木保子(美容師の青木さん?)
- 田島静江(田島の妻?)
- 水原健一(ケイ子の兄?)
- 採石場の親方 *
- デザイナー *
- 佳乃 *
- 闇市のブローカー *
- 易者 *
- 清川伸彦 *
- 漆山連行 *
上記のうち*印をつけた人は原作には出てきません。また田島の妻やケイ子の兄は、原作で存在は示唆されているものの、セリフなどでの登場はしていません。
ストーリーの違い
公式サイトに書かれているストーリーは、原作との相違はないようです。ただし原作がケイ子に会う直前で絶筆になっているので、それ以降の話が半分くらい続くものと思われます。
他の映像化作品:『BUNGO -日本文学シネマ-』(2010年)
『グッドバイ』自体は何度か映像化されているようで、Wikipedia情報では5回映像化されているようです。私が実際に見たことがあるのは、2010年に『BUNGO -日本文学シネマ-』の1作品として放送されたものです。
私の記憶では、原作のストーリーに近かったように思います。キヌ子役の人がなかなか迫力のある演技をしていた記憶があります。
終わりに:2/14の公開が楽しみ
私は太宰治作品が好きで、全作品集をKindleで読んだことがあります。その中でも『グッド・バイ』は、田島のクズっぷりとキヌ子のサバサバとした強さが相まって面白く、好きな作品の上位3位に入るものです。
残念ながら上映される映画館が限られるようですが、ぜひ観てみたいところです。
なお、新潮文庫の『グッド・バイ』の文庫本には、この『グッド・バイ』以外にも『男女同権』(←フェミニスト的な話かと思いきやその真逆で、女性に虐げられてきた男が経験談を赤裸々に講演する)や『美男子と煙草』(←怪しげな酒を飲まされた後に上野駅の地下道を歩いた時の、妙な気付きが面白い)など太宰らしい面白い作品が掲載されているので、よければこちらもどうぞ。